この前、事業投資について新入社員向けの勉強会がありました。コーポレートファイナンスをかじったことのある人にとっては、それなりに理解できる内容でしたが、そもそもDCF法(Discounted Cash Flow法)についての説明も「割引率で毎年のフリーキャッシュフローを現在価値に割り引いて、5年目以降は一定成長モデルをターミナルバリューに置き換えるという前提で計算します」みたいな説明でしたので、知らない人にとっては「何の呪文ですか?」って感じになったはず。そりゃそうなりますわ。
とゆーことで、簡単にですが、何回かのシリーズに分けて事業投資の基礎知識をご説明いたします。事業投資は、コーポレートファイナンスと密接に関連していますので、ファイナンスの基本をここで抑えちゃいましょう。
そもそも事業投資とは?
事業投資とは、何らかの将来的な利益を見込んで、その利益を生み出す源泉となるものを買うことです。簡単に言うと、宝くじを今日1枚300円で買って、1年後の当選発表日に1,000円にでもなれば、見かけ上、すてきな投資をしたことになるわけです。
この宝くじを「株式」に置き換えると、もうそれは立派な「事業投資」。本質はまったく変わりません。ここまでオッケーですね。で、ここで問題となるのが「どんな事業(株式)」に投資すればいいんだ?という観点です。
儲かる事業に投資したい。
どんな事業に投資すればいいか、それは儲かる事業ですよね。300円投資して1,000円返ってきたら、見かけ上は700円儲かっています。「でも、これってほんとに儲けてるの?」という発想が、ファイナンスの世界(事業投資)では大切です。儲けているかどうかは、1年後に得られる1,000円を現在価値に割り引いて、今日投資する300円より価値が大きいか小さいかを判断しなければなりません。(は?って思った方もいるはずなので、より分かりやすく)
ここ重要!仮に1年後の1,000円が、2015年8月2日現在において200円の価値しか持たない場合、今日300円を投資すると「200円 – 300円」で -100円の損を出してしまいます。これ、儲けてるとは言えませんよね。つまり、いまあなたのお財布にある現金資産100円をどぶに捨てるのと同じです。これを会社に置き換えると、BSの借り方にある現金資産が100円なくなるので、総資産額が減ってしまい、企業の価値に悪い影響を与えてしまいます。こんなダメな投資ばかりしていると、手元の資産はどんどん減っていき、その元手資金を提供してくれている株主が怒り、ついには誰もお金を出資してくれない。あー、もうだめ、倒産となるわけ。最後ちょっと飛躍してますが、あくまでもイメージね。
ちなみにですが「NPVが正になるときは投資実行、負のときは投資棄却」という言葉が一般的に使われていますが、実はこれ全然難しくありません。NPV(Net Present Value = 正味の現在価値)が負というのは、上記の200円(将来得られる総利益の現在価値) – 300円(投資コスト) = -100円(NPVが負)のときとまったく同じだからです。よーするに、現代ファイナンス理論の世界では「NPVの値こそが、儲かる事業、儲からない事業を定量的に判断するための指標のひとつなんだな」ということを知っておくといいことあるよ、というお話です、はい。
時間価値がファイナンス理解の第一歩。今日の100円は、明日の100円と、価値が違う。
「んっ、わかんなくなってきたぞ。。。そもそもなんで、1年後の1,000円が今日2015年8月2日時点で200円になったりするの・・・?」という方のために、次回は、ファイナンスを理解するための第一歩「時間価値」の概念をおさらいします。さらに、時間価値と合わせて知る必要のある「資本コスト」についてもお話したいな、と考えているのでお楽しみに。
今日の100円は、明日の100円と、価値が違う。とりあえず、これだけ覚えておきましょう。